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高槻弟妹の視点から眺めるアイマスの世界

アイドルマスターに関心がある『プロデューサー』の大半は成人男性です。アイドルをプロデュースするゲームを元祖とするコンテンツなので、アイドルがどのような性格でどのように振舞うのかは、自然と男性の視点に重きを置かれてしまいます。どうしても不自然に思える「都合がよい少女」の要素が混入してしまうのは避けられません。

では、それを避けるために男性が目にしたくない女性の嫌な部分を描いたとしても、それは解決策としては違うような気もします。派閥同士で仲が悪かったり、同席していない女の子の悪口で盛り上がったりするコンテンツをわざわざ好きになる人はいません。

ただ、最近のアイマスは「都合がよい少女」ばかりが供給され続けており、正直なところ飽き飽きするところもあって、女同士の喧嘩ぐらいあってもいいんじゃないかと思うときがあります。それでも思い留まって考え直してみると、本当に解決しなくてはならない問題は「飽き」にあるのであって、その根源にはアイマスの世界に内在する固定カメラとしての「プロデューサー視点」があるのではないかと思うに至ったわけです。

この問題に対するソリューションを提供してくれるのは、新しいアイドルや世界観ではなく、もっと身近なキャラクターなのだと思います。解りやすい例としては、高槻長介君と高槻かすみちゃんを挙げることができるでしょう。

この弟妹の視座を借りると、今まで慣れ親しんできたアイマスの世界が異なって見えることに気がつきます。これはあくまで一つの例ですが、アイマスの世界を拡げるため必要なのはこうした多数の視座を導入することではないかと思います。アイドル同士の視点も二次創作で多く見られますが、それもある程度固定化されているので、もっと様々な「角度」を取り入れてもよいのではないでしょうか。

 

今回は萩原雪歩さんを例に考えてみましょう。

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プロデューサー観点から雪歩を見ると、だいたい「気は弱そうだけど実は芯がしっかりしてる」といったキャラクターが浮かび上がってきます。これ以上詳しい事が知りたければ世の雪歩Pが延々と話してくれるのでそちらに譲ります。もちろんプロデューサー諸兄同士でも考え方の違いがあって、各々の雪歩が存在するわけですが、大きな差異があるわけではありません。この雪歩が図の(A)に該当します。

 

ここで高槻弟妹に登場してもらいましょう。まずは長介君です。

成人男性の誰にも子供だった時期があるので、少年からアイドルの年頃の女性がどのように見えていたのか想像することは可能でしょう。長介君が重要なキャラクターであるのは、彼の視点を仲介してアイマスの世界を覗くと、アイドルに対する優位を奪われた無力な男子になってしまう点にあります。アイドルに悪戯すると、お姉ちゃんに怒られますからね。

長介が役得なのは、男性が苦手な雪歩にとって、最も身近にいて話しかけやすい男子であることです。なんといってもやよいの弟ですからね。長介の視点からだと雪歩は相当大人の女性に見えるはずなので、かっこつけて強がってみせたりすることもあるかと思います。図の(B)がこれに該当します。そんな時でも雪歩は微笑んでくれたりするのですが、それは成人男性に対する微笑とは違って、少年に対する慈愛が含まれるのではないかと思います。これはプロデューサーの立場からでは得難い雪歩の表情なのではないかと思うわけです。

プロデュース対象として眺める雪歩とは違うこの「雪歩お姉さん」は、年下の男子から見ると案外頼りがいがあるお姉さんなのかもしれません。このように長介君の視点を借りると雪歩だけではなく他のアイドルの気がつかなかった魅力も見えてくるはずです。

 

次にかすみちゃんです。

騒がしい高槻家で育ちながらも萎らしい乙女のかすみちゃんにとって、雪歩は憧れの対象になるのではないでしょうか。とかく弱虫に見える雪歩であっても、かすみちゃんにとっては相応に「かっこいい」女性に見えるのではないかと思います。図の(C)がこれに該当します。比較対象にされる姉のやよいには申し訳ないのですが、物腰の柔らかな雪歩姉さんの振る舞いにかすみちゃんは感化されるのではないでしょうか。これもプロデューサーの視点からでは気づきにくい雪歩の良さなのだと思います。

アイドルマスターの世界でかすみちゃんが特異であるのは、アイドル達に対して少女からの視座を与えるだけではなく、自分の将来に彼女達の姿を重ねることができるキャラクターであるという点です。確かにかすみちゃんと同世代のアイドルは存在しますが、彼女達は既に職業としてアイドルを選択していて、かすみちゃんは未だその決断を下していないのです。

かすみちゃんの視点から姉や仲間のアイドル達がどのように見えるのか。それがかすみちゃんの胸に何を残すのか。そして彼女の将来に何をもたらすのか。

仮にかすみちゃんがステージに立つ日が来るとしましょう。姉と違い気の細いかすみちゃんに勇気を与えるのは、もしかすると自らを奮い立たせてステージに向う雪歩の姿なのかもしれません。そんなカッコイイ雪歩を知らずに済ますのは勿体無いと私は思うのです。

 

とはいえ、プロデューサーの視点で十分ではないかと仰る方もいるとは思います。ただ、そうした方に申し上げたいのは、そのプロデューサー視点でしか得られない狭い範囲の雪歩(あるいは他の貴方の担当アイドル)だけで飽きてしまいませんかということです。貴方が雪歩(あるいは他の貴方の担当アイドル)と密接な関係を維持したいのは理解できますが、それは雪歩(あるいは他の貴方の担当アイドル)というキャラクターの幅を狭め本来見出されるべき魅力を削く結果になっているのではないでしょうか。

あと、理由は同じなのですが、女性プロデューサーも重要な存在です。男性が気付かない観点でアイドルを語ってくれるのは、アイマスの世界にとってありがたいことなのです。女性Pは、オタサーの姫みたいな御輿に留まるのではなく、「女の子はこうなんだ!」と担当アイド ルを語って欲しいです。同じアイドルでも男性の視点と女性の視点では異なる部分があると思いますが、その相違が彼女達にキャラクターの幅を与えてくれると思うのです。

 

世間もお盆休みの時節ですので、プロデューサー諸兄もプロデューサー業務を数日休まれて、自分以外の視点から担当アイドルがどのように見えるのか想像してみるのも一興ではないかと思います。

大切に思うからこそ突き放す。距離を置いてこそ理解が深まる。アイマスの妙ではないでしょうか。