檸檬コロコロ

古本が好きなんですよ、私。青空文庫とかKindleで無料で読める小説もあるけど、ぶらぶら古本屋に行って気になっていた本を見つけて、気がつけば自宅に積読の山が出来上がるって生活が、どうも止められないみたいです。

まぁ、いうてもBOOK OFFとかなんですけどね。神田の古本屋巡りとかじゃなくて、すまないね。あまり趣味にお金を掛けない性分で、たまに発作を起こして古本を大量に買い込むか、どうしても観る必要性を感じた映画に行くくらいなので、我ながら燃費が良い人間だと思いますけど。ケチ臭いとか、言うなって。

 

BOOK OFFのCMとかで、『貴方の読んだ本が他の人にも読んでもらえるってステキ』みたいなこと言ってて、あんだけ安く買い取ってあんな値段で売るんだから、そりゃアンタらにとってはステキだろうとか年甲斐もなく思うんですけど、それでも人の読んだ本が人に渡るときに多少なりとも想いが伝わるようなことは確かにあるんですよね。

最近、梶井基次郎の「檸檬」を読んでみたんです。ええ、BOOK OFFで108円でした。大正時代にレモンだなんて気取ったタイトルつけやがって、と手にしてみたのですが、確かに傑作です。というか完全に自分好み。結核を患ってた梶井氏に独特の基本は陰湿な世界ではあるけれどもその中から何としても美しさを書き出してやろうという文章には、やはり引き込まれてしまいます。そこにですね、檸檬が一個、あればいいのですよ。ネタバレはしたくないので後は読んでのお楽しみなんですけど、こういう爽快な余韻を残す小説というのはなかなか少ないのではないかと思うのです。

 

それで、その古本を読んでると、しおりとは別に一枚の紙切れが挟まっていたんですよ。レシート。気にせず読み進めていたんですけど、ふと気付いたんです。そのレシート、なんと丸善のレシートだったんです。それがどうしたって話ですけど、梶井基次郎の作品の中で丸善というのは文化的な象徴みたいな描かれ方をしているんですね。きっとこの古本の前の読者はそれを読み取って、しかも偶然自分がこの本を丸善で購入した奇遇に気付いて、このレシートを挟んだままBOOK OFFに売ったんですよ。古本を買っていると、たまにこんなことがあるんです。例えそれが東京じゃなくて横浜の丸善のレシートだったとしても、確かに私が受け取りましたよ、見知らぬアナタ。

梶井基次郎の残した檸檬は未だあちこち転がり続けているんです。

檸檬・冬の日―他九篇 (岩波文庫 (31-087-1))

檸檬・冬の日―他九篇 (岩波文庫 (31-087-1))