ホワイトカラーのプロトコルで鼻白むアイドルマスター

何年か社会人をやってると日本の社会を構成しているホワイトカラー層というものが見えてくるようになります。あちこちの会社に出入りする仕事をしている自分にとって、常勤している皆さんにはある種の行動規範があるように思えます。いわずもがな、会社によって千差万別なのですが、共通している部分もやはり多いものです。

 

最近のアイドルマスター関連のコンテンツに触れる中で、どうしても自分が手放しで受け容れられない部分があって、それは何だろうと考えてみた結果、いうなれば「ホワイトカラーのプロトコル」なるものに内在する価値観が病原ではないかと思うに至ったわけです。

 

まず、アイドルなりプロデューサーという仕事が嫌なのかというと、そうではありません。むしろ、そうした職業は安定的なホワイトカラー層とは対を成すものです。平凡な人生を捨て芸能界に飛び込む。結果を潔く受け入れる。真似できるものではありません。大なり小なり組織の中で生きざるを得ない我々は、葉隠の如き刹那を彼女達に託すしかないのですよ。

ところが、アイドルマスター2、そして、劇場版アイドルマスター。やたら強調される『リーダー』という言葉。何でしょう?いいじゃん、別に、アイドルグループで、そんなの。いや、必要ですよ、確かにリーダーは。劇マス春香リーダーが苦悩するストーリーも、それはそれでアリですよ。でもですね、互いが水平な地点に立って影響しあうというのもアイマスのキャラクターセットの面白さだと思うんです。リーダーって、上下関係つけちゃうの?はいはい、リーダーシップ論とかありますね。曰く、単純な上下関係だけではないそうですけど、どうしてもリーダーはメンバーとは区別されることが前提になりますが。まぁ、いいや、公式がそうなので、『リーダー』はよしとしましょう。

 

では、この『リーダーの話がいいんだ』という考え方はどこからやってきたのでしょう。これはおそらくアイマスの成り立ちであるゲーム開発にあるのではないかと推測しています。

 今日では企業の業務改善にはシステムが不可欠ですので、私も仕事柄システム導入支援を行うことがあります。意外に思われるかも知れませんが、システム開発とゲーム開発はプロジェクト管理の観点ではよく似ています。違いといえば終盤に「面白いかどうか」を検証する工程があるという点でしょうか。多数の人間が関わるため、各チームのリーダーが重要な役割を担うようになります。そしてコミュニケーション不足がプロジェクトを阻害する最大の要因となります。必然的にリーダーには各メンバーへの気配りが求められますし、その役職の難易度は高いものです。優秀なメンバーでも優秀なリーダーになるとは限りません。世の中のリーダー達は苦労しているわけです。

必然的に、 こうした予算と納期に追われ続けるアイマス開発の現場の人達はリーダーという役職の苦労を味わいますし、リーダーにより仕事のパフォーマンスが大きく左右されることを身を以って知ります。リーダー達は苦労が絶えません。アイマスではアイドルへの自己投影により嵌り込むプロデューサーが少なくありませんが、制作側もこの罠に陥らない保障はありません。リーダーとして苦労している姿は自分では見えませんが、シナリオを考えているうちにリーダーとして苦心するアイドルを思い浮かべると、そのアイドルの姿に感動するのでしょう。それが面白いと思ってしまうのでしょう。そうして、ただかわいい女の子と戯れたいなと思っているプロデューサーの前に、意識の高いマッチョなアイドル達が提供されてしまうわけです。

 

そしてホワイトカラー族の進撃は止まりません。

モバマス・グリマスで潤沢な資金を得たアイマスには次に何が起こるでしょう?いくら潤沢なキャッシュフローがあったとしても、企業ですから無条件で金がばら撒かれるわけではありません。甘めにはなるものの、予算策定が必要です。そして、そのための根拠となる支出を説明できる資料を準備しなくてはなりません。

アイドルマスターは複雑なコンテンツですし、その中核部分たるキャラクターの構成には、なかなか予算で表現しにくい労力が必要とされます。

このような状況の中で、手っ取り早く予算を確保する方法とは何でしょう?それはシステム業界と同じで、人月で換算できるプロダクトを企画することです。しかし、据置機のゲームだけでは予算を確保するだけの工数を積み上げることはできません。ソーシャルゲームも予算規模は少ないので一工夫が必要となります。ここでアイマス中興の功労者がその果実を得ようとします。そうです、アニマスで培った人員を展開できてある程度の工数をぶち上げることができるアニメの劇場版が企画されるわけです。ちなみに余った予算はプチマスで消化する抜け道も準備できます。予算案を組めと上司から急かされるホワイトカラー族はこれで一安心というわけです。

それともう一つ、モバマス・グリマス用に声優を多く確保します。これも予算として見えやすい代物です。声優を供給する側は常に不安定なスケジュールに悩ませ続けられていたのですが、長期で安定した仕事を供給してくれるアイマスはこれ以上考えられない程ありがたいクライアントであるはずです。ここに、アイマスプロジェクトと業者の思惑は見事に一致するわけです。

昔、インフラ関連の企業のお手伝いをしていた時期がありましたけど、中の人から自分達がお前達に仕事をやらせているのは公共事業のようなものだと言われたことがあります。もしかするとアイマスの予算を握っている方も、このような気持なのかも知れません。

 

さて、この固定費の増大ですが、そのまま当初は脇役だった新世代アイドル達を固定メンバー化させることでしょう。固定費が増大すると尚更アイマスを回し続けるしかありませんね。しかし、この回転が縮小したときに何が起こるでしょうか?アイマス2でアイドルの削減がどれほどの反発を招くか学んだはずですので、きっと何か策があるのでしょう。もう正直把握しきれない程のアイドルが量産されていますので、ファンを散らせばプロデュースできなくなるアイドルが出てきても反発は小規模に留まるという打算があるんでしょうかね。

しかし、業者側は黙っているでしょうか?生活というものがありますので、プロデューサーからの要望を旗印に前年と遜色のない予算を要求し続けることになるでしょう。そうした状況に疲れたバンナムが、アイマスブランドを業者に提供して、あとは勝手にしろと言い出すかもしれません。アイマスの帝国化というわけです。あるいはバンナム主導で整理がなされるかですかね。こうしたことを考えると、もうすぐ発売されるOne for Allが、今我々が漠然と考えているアイマスというゲームの最後になるかもしれません。